ジャーナリスト インタビュー

ITジャーナリスト 神尾寿

非接触ICの市場を
10年先取りしていた
おサイフケータイの今後に
求められること

ITジャーナリスト 
神尾寿 かみお ひさし さん

写真:ITジャーナリスト 神尾寿さん

2004年7月に初の製品が登場し、いよいよ10年目に突入した「おサイフケータイ」。その“これまで”と“これから”を携帯電話、非接触IC、自動車・ITSなどの市場・業界動向などについて詳しいジャーナリストの神尾寿さんに話を伺った。

―まずは率直にお尋ねします。「おサイフケータイ」10周年を、神尾さんはどのように捉えていますか。

2004年7月のサービス開始からもう10年も経ったんですね。改めてそれを振り返ってみると、おサイフケータイが時代を10年先取っていたことを強く感じます。海外ではようやく去年、アップルが「Apple Pay」のようなかたちでおサイフケータイの取り組みに追いついてきました。これは世界に向けて誇って良いことだと考えています。

その上で、おサイフケータイの今日と過去の違いを言えば、まず端末が変わった。当時はおサイフケータイ=フィーチャーフォンだったんですよね。今にして思うと、本来スマートフォンでしか実現できないようなコンセプトをよく実現できたものだなと感心します。先進的とも言えますし、先走りすぎとも言える(笑)。しかし、決して間違いではありませんでした。

この際、もう1つすばらしかったのが、おサイフケータイを単に「ファンクション(機能)」として載せたのではなく、「アプリケーション」も重視し、サービス開始と同時に多くを提供できていたこと。その代表格が「Edy」などの電子マネーですね。最初からこれをキラーアプリケーションと定義していたことは評価に値します。さらにその上で、付加価値として認証キー的な使い方なども提案していました。

こういった取り組みでありがちなことなのですが、「ファンクション」だけを提供して終わってしまったのでは意味がありません。分かりやすい「アプリケーション」を載せられて、初めて価値があるのです。おサイフケータイはそのことをしっかりと踏まえて作られていたのではないでしょうか。先のApple Payも同様の展開を行なっていますが、これについては、彼らがおサイフケータイの成功から学んだのではないかと考えています。それくらいおサイフケータイは開始当初から完成度が高かったんです。

―たしかにハードウエアはフィーチャーフォンからスマートフォンに変わっていますが、当初から今できることの多くが実現されていましたね。

しかし、フィーチャーフォンから始まってしまったということで、それゆえの問題も生み出してしまいました。例えばこれは既に解決していることではありますが、スマートフォンへの移行で足踏みしてしまったことが1つ。そして何より、将来に向けた大きな課題が「グローバル化」です。

しかし、これはどう考えても仕方のなかったこと。国内企業の強力なパートナーシップがあったからこそサービスを一気に立ち上げることができたのですから。「ファンクション」はともかく、電子マネーのような社会インフラ的な「アプリケーション」はドメスティックなものにならざるをえません。あのアップルですらApple Pay(現在は米国内でのみ利用可能)はドメスティックでガラパゴスです。これはもうトレードオフの問題なんですよ。

Back